幸せへの扉

繰り返し目にする数字パターン。これはいったい何を意味するのだろう。それが自分を導くエンジェルナンバーの存在に気づくきっかけだった。
その数字の意味を調べはじめたら、それは全てが今の自分へのメッセージだった。天使は少し前を歩きながら、道を示す。迷いそうになったら諭し、寂しくなったら愛のこもった言葉で励ます。始めからずっとそばにいてくれたのだ。すべての人のそばに。

優しい声

昨日は祖母の命日だった


仕事があったので

夕方に行くつもりでいた


昨日も…

いつものように

仕事で疲れ

(誰もがそうで、当たり前なのに)


正直、帰宅してお墓参りにいくことが、少ししんとく感じていたのである


おまけに

ちょっとした通り雨


お墓参りに行かない理由を

その雨のせいにして

肯定しようとした


帰宅してから

雨がやんでいたので

お墓参りに行こうと思えば行ける状況ではあった


しかし、気持ちと体が重くて

腰を上げる気になれない

1日遅れるが

日も暮れた遅い時間に行くよりも

疲れを取って翌日にいくことにした


金曜日

いつものように一週間の色々な疲れがたまっていた

明日に備え

休んで英気を養わなければと思う

なのに

寝付けない


なにか

自分が自分を責めていて

心がざわついていたせいだ


これではいけない


自分のこれまでの色々な出来事を振り返り

なにか

自分のなかの無数の至らなさが許せなくて

心がざわついて

心と体を休めることができないのだ


明くる日


気持ちのよい快晴

少し汗ばむほどの気温


この快晴の初夏の日差しとは裏腹に

一夜開けても心は晴れていない


お墓参りにいかなくては


どうしてこんなにやることばかりなのだろう…

疲れているのに

やってもやっても終わらない…

思うように片付いていかない…


疲れていると

思いたくないことも思ってしまう


自分に余裕がないと

思いたくないことを思って

目を背きたくなるような感情に包まれるものである


こんなことではだめ


こんな恩知らずなことではだめ


怠けているのでは…?


今はしんどいから休みたい


そう感じている心を責めた


心と体をひきずって

でも行かなくては


おばあさんが淋しい思いをしてるに違いない…


庭に咲いている花を

一つ一つ摘んで

墓前にそなえるために

ブーケのようにまとめた


薄いピンクの牡丹

濃い目のピンクの牡丹

濃い紫色の菖蒲

この時季にいつも庭を彩ってくれる花たちを集めていたら

少し心が和んだ


花たちの力だ


それらをもってお墓に向かうときだった


何か

心が暖かい


そして


『ありがとう』


『綺麗なお花』


『あなたは優しい子』


『何を責めることなどある?』



そんな声が

静かに心に響くのである


『あなたは、いまこうして

お墓に向かおうとしているじゃないの?』


『どんなことをどれだけ思おうと…』


『あなたは

こんな尊いことが出来る子なの』


『あなたは

責められる悪い子じゃないの』


出来ない自分を責めなくてもいい

出来なかった許せない自分も

責める必要はない

その声は語るのだ


この不透明な世界で

一生懸命、模索しながら

みんなが生きている


責めたくなるようなときもあれば

誇らしいときもある


いつも

その両方があるもの


責めたくなるような

自分もあっていい


お墓参りに行きたい

その気持ちは本物なのだから


声が心に響き

涙があふれてとまらなかった


お墓参りをして帰宅するまで

ずっと、その暖かい声とエネルギーは私の心を優しく包んでいたのである


家にかえり

心の曇りは

すべて取り払われて

穏やかさが戻っていた


その暖かい声と優しい力によって


愛を受け取り

心と体に力を取り戻した


その声は

きっと祖母のものに違いない


心は

通い合うのだ


真心をこめさえすれば

自立

誰かに意地悪されたり

心ない態度を取られたり

自分だけ仲間外れにされたり


そんなことをされると

人は誰でも

心がこわばって

自分に何か原因があるから

そういうことを人からされてしまうのではないかと思うものだ


自分が悪いから


何か至らないから

情けないから

何かが足りないから


だから、批判される

バカにされる

人に受け入れられない


そうやって

自分で自分を否定するように考えて

追い込んでいくのだ


ただ

ありのままでいることを自分で自分に許せない


その反動で

人に好かれようとしてみたり

人に気に入られようと気持ちとは裏腹の自分を演じてみたり

必要以上に虚勢をはったり


人に好かれなければならない

受け入れられなければならない

気に入られなければいけない


そうしないと

世間を渡っていけない


行き着くところは

いつもそこだった


もう

何年、何十回、そんな思いを抱いてきただろうか


いたたまれなかった

いつでも


そして

いつも何か頼りなげで寂しかった


今なら

はっきり言える


そんなものの犠牲になることはないのだ、と


ありのままの自分じゃいけない


ありのままの自分だとダメだ


今まではそれが信条だった


でも

これからは違う


自分自身の評価は

自分自身が決める


誰かに受け入れてもらうことが目的ではなく


自分が自分自身を受け入れることをしていく


そして

それこそが大切なのだということ


そうすることで

これまでとは

まったく違う世界が拓けていく


もっと

楽に


もっと

楽になろう


自分が自分自身を受け入れれば

なにも怖くない


何も恐れなくていい


何にも、誰にも

不必要に気を遣う必要なんてない


人に好かれなければと

顔色を窺うことは

とても心を消耗する


そのために

自分が自分でいられなくなったり


本当の自分を押し殺していなければならなくなる


そんなことをしなくても


人に気に入られようと

顔色をいちいち伺わなくても


人に親切にふるまうことはできるもの


そして、それが出来る人は

人から見捨てられることなどない


だから、極論を言えば

人の顔色なんて

伺わなくてもいい


今、自分が無理なく

してあげられることを

誰かに、ただ、してあげればいい


もう、よけいな

何にも囚われる必要はないのだ


楽になろう


自分で自分のありのままを

認めよう


受け入れよう


自分をあるがまま

すべてを


それは


誰かに寄りかからずに

自分の足で立つことでもあるのだ


自立とは

誰の力も借りずに

頼らずに

ひとりでなんでもこなす、ということではなく


自分のありのままを

認めて

愛して

誰かの評価を頼りにすることなく


寄りかからず

傾かず

まっすぐに

そこに立つことなのだ


わたしは

初夏の清々しい風を受けて

そこに

まっすぐと立つ


これがわたし


これでいい


迷わずに

そう思いながら

自分のために

今日もいつものように

仕事を切り上げて

家路に向かう


五月晴れだった日が暮れていき

水を張った田んぼに

夕日が映り

煌めく光が目に優しい


いま、ここにある

好きな季節

好きな時間

好きな光景


こんな、ほっとする時間も必要だ


とても必要なのだ


先へ先へと急ぐことばかり

考えてしまうけど


寄り道をして

帰り道のいつもの公園の

生まれたての緑に会いにいきたくなってしまうのだ


今日1日頑張った自分を

そこで

一休みさせる


気持ちのゆくままに

トボトボと歩き

木々の間から、姿は見えずとも

カッコウやウグイスの声が聞こえてくる


子ども頃に

山に遠足に出かけた

記憶がふとよみがえる


心が和んだ


何も考えない

いま、ここで何もしようとはしない


ただ

その安らぎの空間に

自分をしばし

預けるのだ


急ぐことばかりが能じゃない


空いた時間に何かをしなくては、とか

いつもより早く帰れたから

あれもして、これもして…


たしかに

それは時間の有効活用でもある


しかし


そんなふうに

自分自身をキツキツにすることはもうやめたいのだ


「あれ」も終わってなくてもいい

「これ」もまだやってなくてもいいのだ


いま、ここで

優しく語りかける緑の風に

自分自身の心と体を預けることが

自分にとって大切なこと


そして、気持ちが求めていること


だから、立ち止まろう


先へばかり急がずに


カッコウの歌

ウグイスの歌を

耳にして


風にざわめく

瑞々しい

緑を目にして


ざわついて

こわばっていた心が

いま、ゆっくりとほぐれてきた


生身の人間にとって

止まることなく走り続けてばかりいては

いつかは失速して、つぶれてしまう


たとえ

気持ちが

「このままではいけない…」

そう訴えてきたとしても

優しく説き伏せてみよう


『大丈夫』


『物事は順番に片付いていく』


『順番に片付けられる』


すべてを

いっきにやるのではなく

できるタイミングにのって

対処していけばいい


だから

立ち止まりたいときは

素直に

立ち止まる


こんな時間を

これからは

大切につくっていきたい


もっと

自分を許そう


気を張らずに


誰のためでもない

この自分のために